誰のためのデザイン?

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

デザインといってもお絵かきの話ではありません。
使いやすい道具をいかに設計(デザイン)するか。

使いにくい道具によっておきるミスを、ユーザのせいにするのはやめようよ。
わかりにくい操作の言い訳のために、複雑怪奇な説明書にびっくりマークをつけるのはやめようよ。
ユーザは自分を責めるのをやめて、この道具わかりにくいよ、と声を上げようよ。

というお話です。

使いやすい道具が満たすべき原則を示しながら、とてもわかりやすい具体例を使いながら語ってくれます。いろいろと考えちゃいました。

ツールとしての書類

私たち、事務職員はいろんな書類を作成します。
これを、情報をやり取りするための道具としてとらえてみるとどうでしょうか。
記入ミスをユーザのせいばかりにするのではなくて、項目は自然な視線の流れを妨げないように配置されているか、関連する項目のまとまりが可視化されているかなど、デザイナとして見直してみるのはどうでしょう。
また回収された書類は、今度は私たち職員自身の使う道具になります。
学籍番号など、整理の助けになる情報を、書類の隅にもう一度印刷しておくことで、整理・検索の効率はぐんと高まりますね。

電子的な入力フォームの作成

事務職員が作るとなると、表計算ソフトなどで枠組みを作るぐらいのことでしょうけど、書きやすい紙の書類と、入力・修正しやすいデジタルの様式ではちょっと論理が違うことを意識したいですね。
紙の書類では、少ない枚数に収めることが使いやすさに大きくかかわるので、1行に出来るだけ多数の項目を並べることも必要になってきます。
一概には言えませんが、入力フォームの場合は、画面を立てにスクロールするコストはそんなに高くないので、シンプルに入力項目を縦に羅列したほうがわかりやすい場面が多いと思います。

反面教師

ちなみに、紙の書類としても、電子的な書類としても使い勝手の最悪な例は
http://www.mext.go.jp/b_menu/online/index.htm
にいっぱい転がっています。
例えば、
https://shinsei.mext.go.jp/guide/koutou_daigaku/370000193attached.html
その1ページ目がこちら(クリックして拡大)

これ、印刷して提出するための様式でなくて、ここに入力してファイルで添付するんですよ。
何しろ「電子政府の窓口」ですから。

今もあるかどうか知りませんが、以前提出した様式では、Excelを方眼用紙風に使ってあって、数桁の数字を1セルに1文字ずつ入力するなんていうのもありました。
大体こんなファイルを提出されても、デジタルなデータとしては非常に扱いにくいと思うのですが、各様式ごとに入力された項目を抽出するプログラムでも組んであるのでしょうか。
まさか印刷して紙で配布する以外には使わないとか言うわけではないですよね。
なにしろ電子政府ですから。



##そもそも、特定企業のファイル形式を国あての提出書類に使わせるのはどうなのかというのはこの際おいときましょう。(なかなかOOO.orgでとはいきませんねフラスコ先生)


ああ、書評のはずだったのに、役所への愚痴になってきたので今日はこの辺で。
##良い本ですよほんとに。